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書評:『田中智のミニチュアワーク』


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書評:『田中智のミニチュアワーク』

2012年12月発刊の、皆様ご存知の書籍(人によっては「経典」)。今更ながら感想などを述べたいと思います。

著者の田中智さんの説明は、もはや不要とも思えるのですが、nunu's houseというブランド名でミニチュア製作の活動をされています。

待望の書籍発刊ということで、買われた方も多いと思いますが、Amazonのレビューを見ると、下記のような意見も…。

友達に薦められて購入しました。 あまり興味のない分野でしたが、見せてもらったら、とても可愛かったので、思わず購入してしまいました。 シリコン型を作って制作するというのが、とても面白いと思いました。 ただ、数個を作りたいが為にシリコンを買うのは、かなり高くつきますが・・・(苦笑)。 色んな種類を含め、沢山作る予定がある人でなければ、シリコンが余って無駄になります。 それから、食べ物以外のミニチュアの作り方がありません・・・。 食べ物は勿論可愛いですが、飾り方があってこそです。 食べ物だけ作って置いておいても、味も素っ気もありません。 ドールハウスなど、別の本を買わなければならないのでしょうか・・・。 なので、全体の完成度としては、不満です。

» Amazon.co.jp: 田中智のミニチュアワーク (Handmade Series)のレビュー

作り方はお菓子のみで・・。もう少しいろいろ載っていたら嬉しかったです。

» Amazon.co.jp: 田中智のミニチュアワーク (Handmade Series)のレビュー

もっと詳しい作り方が掲載されているかと思っていましたが、期待外れでした。

» Amazon.co.jp: 田中智のミニチュアワーク (Handmade Series)のレビュー

うーん、作り方への不満があるようですね。本のタイトルを音読すると、この本の趣旨がわかると思うのですが…。まぁ、それだけ、作り方への期待が大きい証左とも言えるのかもしれません。

私もミニチュア製作をやっている人間ですが、個人的には、文言や写真に至るまで、これほど「宝の山」な書籍は、非常にありがたく貴重です。

「作り方」だけが「作り方」でなく、また、その「作り方」も、「なぜその作り方なのか」といった目と考えで接すると、また違った見え方・読み方になるかもしれません。

例えば、72ページのブルーベリーの作り方では、粘土に青の絵の具を加えた後に、赤の絵の具を混ぜて、ブルーベリー色を作っています。「赤→青」の順でなく、なぜ「青→赤」の順なのか。その理由を考えることも、調色のテクニックやコツを学ぶことにつながるはずです。

85ページのバラのピンクに関しても、写真を見ると、使われているのは、アサヒペンのクリエイティブカラースプレーとわかります。そこからピンク色を割り出すと、ベーシックカラーの「コスモスピンク」、ミスティカラーの「ミスティーピーチ」「ミスティーピンク」の3種が候補に。書籍の写真から、かろうじて「ツヤ消し」の文字が見えるので、ツヤ消しタイプは、ミスティカラーのみ。色味を考えると、使われている缶スプレーは、アサヒペンの「ミスティーピンク」と類推できます。(同じような要領で、葉の部分のタミヤスプレーも、飛行機の絵の付いた方は「ダークグリーン」。もう1つは、「レーシンググリーン」か「ブリティッシュグリーン」というように類推可能ですね。)

また、ヒートプレス・塩ビ板という文言と、写真を見て「この食器の塩ビ板は、0.5mm厚を使ったのか?1mm厚なのか?」や、「この食器は、スプレー塗装だとすると、タミヤのカラースプレーには無い色味だから、アサヒペンの「ミルキーホワイト」辺りだろうか…?」といった具合に考えると、非常に面白いはずです。さきほど「宝の山」と表現しましたが、本当に宝探しのような、ミステリー小説を読むような醍醐味があります。

ミニチュアを作る方でなくても、ミニチュア好きな方には、きっと楽しめる本でしょう。素直に「凄いなぁ。」「こんなレストランに行ってみたいなぁ。」と思える作品を眺めるだけでも、充分に幸せではないでしょうか。たぶん、海外の方から見ると、こんなクォリティの高い本が、安価で、しかも母国語で読めるというのは、嫉妬されるレベルをはるかに超えているでしょうから…。