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書評:『Mr.HOBBY Master Book』


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書評:『Mr.HOBBY Master Book』

書店に行っても売ってなかったので、通販で注文していた本が届きました。

模型メーカーのGSIクレオスの製品(主に塗料)にスポットをあてた書籍。読んだ瞬間に思わず声を出してしまいました。

この本は、冒頭から「長谷川迷人」が登場します。模型界では、知らない人はいないでしょう。Ustreamユーストリーム)で、模型講座などの生配信もされてらっしゃいます。

特に、YouTubeに転載された下記の動画は必見です。

◆ お昼休み模型講座・特別編《動画で見る!上手な缶スプレー塗装のコツ》

↑この動画は、本当にためになります。

長谷川迷人が関わっているとは、知らずに買ったんですが、迷人が関わっているなら間違いないだろうと思って、読み進めた時に、思わず声に出して驚きました。

書評:『Mr.HOBBY Master Book』

↑「スケールエフェクト」の記事です。

日本のこういった模型関連の書籍で、ここまで「スケールエフェクト」に誌面を割いた本を見たことがありません。

ところで、DMH展2013の個人的な感想を…|できるミニチュア教室(アメブロ版)にて、『ミニチュアの持つ構造的な課題』と書いたんですが、それが「スケールエフェクト」に関することでした。

ざっくりと「スケールエフェクト」を自分なりに解説しましょう。スケールは「縮尺」、エフェクトは「効果」という意味があるので、個人的には「縮尺効果」と読んでいます。

そこで、等式にすると以下のように。

『1m離れたミニチュア(1/12)の見え方』=『12m離れた実物の見え方』

つまり、1メートル先の距離にある1/12サイズのミニチュアは、12メートル先にある実物と同じ見え方に、理屈上はなるはずなんです。10cm先のミニチュアだと、1.2m先にある実物と同じ。こういった事を考えると、どうしても、ミニチュアは、構造的に遠く感じます。ですから、臨場感の演出が難しい。

匿名掲示板などで、オークションで手に入れたミニチュアが、「写真と印象が違う。写真マジックだ!」「実物は、思ったよりも…。」という辛口の意見があるようですが、スケールエフェクトを考えると、そう思ってしまうのも、わからなくはありません。

パソコンの画面でも、わかりやすい(極端な)実験をしましょう。絵画の世界などでは、「Area Effect(面積効果)」と呼ばれる現象なんですが、以下に2つの円があります。

書評:『Mr.HOBBY Master Book』

2つの円は、全く同じ色です。左の大きな円よりも、右の小さな円の方が暗く見えると思います。この画像をパソコンか、タブレットか、スマートフォン・携帯で見ているかは、わかりませんが、発光している液晶画面でさえ、小さいものが暗く見えるので、実物のミニチュアだと、なおさら暗く遠く感じるはずです。

さて、模型の世界では、このスケールエフェクトについて、1988年に発刊された、デービット・クラウスさんの著作「The IPMS color cross-reference guide 」にて、興味深い言及がされています。

» The IPMS color cross-reference guide (Open Library)

この本では、1/32スケールの模型の塗装には、ベースとなる色に白を7%添加。1/48だと、10%添加、1/72だと15%添加すると、よりリアルな表現となるという方法論が紹介されています。スケールの大きさによって、色調を変えるという提言です。(最近の模型界では、この方法は、古典的で、単純に白を足すやり方を試す方は少ないと思いますが、こういった方法論を提唱した功績は大きいと、個人的には思います。)

では、ミニチュアのスケールエフェクトをどうするのか?どうやって臨場感を演出するのか?

この答えこそが、ミニチュア作家自身の技や味なんでしょう。DMH展で、いろんな作家さん達の作品を見て、1番に感じたポイントでもあります。(この辺の解説は、いつかの機会に…。)

さてさて、書評に戻りますと、この本は、かなり有益な情報が満載です。

↓例えば、クリア塗装・調色のコツ。

書評:『Mr.HOBBY Master Book』

ルーターの先端工具の使い分け。

書評:『Mr.HOBBY Master Book』

今度、クレオスから新型の塗料が出るので、少しタイミングが悪い発刊と思わなくもないんですが(逆に言えば、新型塗料が出る前に、出版したかったんでしょうけども)、手元に置いておいて損はないでしょう。書評:『プラモデルカラーガイド』で紹介した「プラモデルカラーガイド」と合わせて読むと良いと思われますが、あいにく「プラモデルカラーガイド」は絶版なので…。

ただ、今回の書籍の方が、たぶん勉強になる内容に富んでいます。(カラーガイドは、いわゆるレファ本ですね。)